• 開発秘話

開発者ストーリー|研究開発部Tの苦悩と成長(五)

エポキシ発泡コアの開発と、管理者としての成長

これまでの樹脂開発で、唯一能動的なチャレンジとして開発を進めたのがエポキシ発泡コアの開発だった。

開発をスタートさせるきっかけは2015年頃に受けた引き合いで、PC筐体に「薄く段差のある形状」が要求だった。
CFRPやGFRPの複合材を使って形状を製造する事は、これまでのスーパーレジンの製造力で可能ではあるが、
単に形を造るだけでは量産効果が無く、これまでの製法ではコスト面でも無理があった。
そこで複合材だけでなく異なる材料の組み合わせが必要になったが、
その当時は解を見いだせず案件としては成り立たなかった。

その後、このような案件に対しての対応にCFRPだけでなく異なる材料の複合は必要だと考えていたが、
世の中に1mm以下の発泡材は存在していなかった。
発泡材に加工を加える事で薄くする事は可能だが、そこには追加工の費用がかかり、コストにもリードタイムにも影響が出る。
それなら世の中に無い極薄に発泡するエポキシ樹脂を開発してみよう「無いものは造る」との発想となった。

エポキシ樹脂の開発を多く経験してきた事で、エポキシ発泡コア技術は短い期間で開発する事ができた。

それは過去(I.S.T時代)に経験した「発泡ポリイミドの研究」が役に立ったと言う。

エポキシ発泡コア技術の開発が出来た事により、
次はその技術を事業化して会社の利益にする事がTの新たなチャレンジとなった。

既に実用化されているのがドローンに取り付ける「プロペラガード」だ。
ドローンの機体はより軽量を求められる為に、従来の製法で形状は作れても軽量化の効果は少ない。
しかし、複合材とエポキシ発泡コア技術を融合する事により、大幅な軽量化を実現する事ができた。
特に発泡コアを極薄に形成できる事や厚み方向に薄さと段差を持たせる事が出来る技術は、
開発をスタートさせるきっかけとなった案件の要求事項を全てクリア出来る所まで確立された。


開発者Tの揺らぐ事のない一貫した開発マインドがあったからこそ成し得た技術である。

現在は研究開発部の管理者としてマネジメント業務に従事しながら、
樹脂研究も並行して進めると言う多忙な日々を送っているが、
エポキシ樹脂に関わりをもった当初は文献を漁り、知見を得る為に講義への参加など自己の成長に努力し、
実際に開発と言う業務に携わった10年だった。

Tは自信に満ちた表情でこう話してくれた
「自分が独り立ちしたと感じた瞬間は、とある協会から発泡コア技術に関しての講演を依頼された時です」と。
勉強する側からついには講演を任されるところまで成長したTは、この先もスーパーレジンだけに留まらず、
複合材業界や、研究開発を志している方々へ、色々な意味で貢献してくれる事だろう。